「それに、俺にはやらなければならないことがある。誰かのものになってる暇なんてねぇんだよ」 「うん、そうだね」 俺はちょっとだけ、声のトーンを落とす。 三蔵はいつも前だけを見つめていて、時々隣に居る俺のことすら忘れているのではないかと思うときがあって、そんなとき三蔵がちょっとだけ遠く見えて俺は、ほんの少しだけど悲しくなる。 「間抜け面」 「うわっ!」 三蔵は、不意に俺の手を掴むと自分のほうへと引き寄せる。 突然の三蔵の行動に俺はバランスを崩して三蔵のほうへと倒れこむ。 「片手だけなら、お前のものになってやってもいい」 「え?」 俺は三蔵の意図が分からず首を傾げる。 「俺の手は色々なものを引き寄せる為にある。だから、両手を繋ぐわけにはいかねぇ。だから、片手だけだ。この手だけはお前のものだ。だから離すな」 そう言って三蔵は繋いだ指先を絡めそこに唇を落とす。 突然の三蔵の告白。 それは、どんな愛の言葉よりも雄弁に俺の心を鷲掴みにした。 「了解!俺、どんなことがあっても、ぜってぇ、この手を離さないからな!」 俺は途端に満面の笑顔になる。 俺は、自分だけが三蔵を強く想っていて、三蔵は同じ想いで返してくれないなんて思ったこともあったけど、そんなことはなくって、三蔵はちゃんと俺を見ていてくれる。 「三蔵、大好きだよ」 「フンッ、馬鹿の一つ覚えみてぇに同じこと繰り返してるんじゃねぇよ」 三蔵は照れているのか、その白い頬が微かに紅潮しているのが夜目が利く俺には見てとれた。 「へへっ…」 三蔵の手を繋いだまま、向かい合わせの格好で眠りにつく。 「ねぇ、三蔵」 「なんだ」 呼びかけると、既に半分夢の世界へ旅立っているのか、三蔵からは億劫そうな返事が返ってくる。 「俺、ガキでごめんな。三蔵のこと全部包んでやれるくらい大人だったらよかったのにな」 「バーカ。お前はお前だろ。そのままでいいんだよ」 三蔵はそれだけ言うと本格的に、夢の世界の住人になってしまったようだった。 「うん。そうだよな。俺は俺にしかなれないもんな」 自分が、三蔵の口の悪いところも、高飛車なところも、優しいところも全部ひっくるめて全部好きなように、自分もそのままで良いんだと言ってくれる人がいる。 「やっぱ、俺ってすげぇ、幸せ」 穏やかな寝息を零す三蔵の唇に俺は、触れるだけの接吻をする。 「おやすみ三蔵」 繋いだ片手から伝わるイメージは光の洪水。 初めて、出逢ったときとかわらず、黄金に輝く俺の太陽。 いつだってこの人が俺の道標。 |
END |
2005.12.5 |
コメント 連条ひるい様、開催の93祭りに寄贈させていただいたものです。 テーマは強くて格好よい三蔵。男前三蔵を意識しないと書けないあたり終わっているのかも…。タイトルは、マリみてをご存知の方ならお分かりになるハズ(笑) |
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