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「う、うむ…」
だが、劉輝は思ったほどのはしゃぎぷりもなく、意外と言えるほど、大人しく饅頭を口に運ぶ。
饅頭を口に運ぶ間もちらり、ちらりと、時折、絳攸の方を伺うように見ては、また食べることを再開するという様子だった。
「主上、お茶のおかわりはいかがですか」
楸瑛の言葉に劉輝は頷く。楸瑛が、ことりと茶器をおいたとき、劉輝はこそりと楸瑛に話しかける。
「楸瑛、邪魔をしてすまなかったのだ」
「おや、気づいておいででしたか」
「うむ。その…絳攸に言うべきだろうか。書翰が逆さまだと」本人は極めて冷静を装っているようだが、やはり動揺は隠せないようだった。
「どうやら、私の悪戯も成功したようです。主上にはお礼を言わなければなりませんね」
楸瑛はそう言って、笑みを浮かべた。
「絳攸、君もお茶のおかわりはどうだい」
「え、ああ」さりげなく、絳攸の手から書翰をとりあげ、『お茶がこぼれるといけないからね』などと言い、元あった場所に戻す。
「ああ、そうだ、絳攸。この前、言っていた酒が手に入ったのだけどね。よければ今夜どうだい?」「え…」
「私としては、今夜ゆっくり先程の続きをしてほしいのだけど」このところ、互いに忙しく二人だけの時間を持つことがなかった。飢えているのは楸瑛ばかりではないと、先程の行為で確信しての言葉である。
暫し、どうしたものかと迷うように視線を泳がせた絳攸だったが、やがてため息と共に頷く。
「そうだな、久しぶりにお前のところの肴を味わいたくなった」
触れたいのは、自分とて同じことだったので、楸瑛の誘いに乗ることにした。
まったく、いつの間にこんなふうになってしまったのだろうかと思うが、情けなくなるので、深く考えるのはやめることにした。
「では、主上そういうわけですから、私たちが早く帰れるように頑張ってくださいね」
「う、うむ。今日は二人でゆっくりと酒を呑むのだな」楸瑛の言葉に気圧されるように劉輝は頷き、菓子の最後の欠片を慌てて飲み込む。
自分の大切な人たちが幸せなのは、喜ぶべきことだが、劉輝は複雑な気持ちを隠しきれない。
そう、かぼちゃのおばけに藍邸に悪戯を仕掛けてほしいと願ってしまうくらいのことは許されるだろう。真面目に仕事に取り組み始めた、どこか楽しげな側近たちを見ながら、そっと劉輝は思うのだった。
2006.10.31
コメント
お医者さまでも草津の湯でも治せないのが恋の病なのです。バカップルにあてられる王様(笑)えせハロウィンものということで!ちなみに絳攸は劉輝は気づいていないと思っています。恋仲なのはナイショなのです。バレバレなのにね!(笑)