The Seven Star Stories 6


「そうです。彼、絳攸殿は明らかな星団法違反です」

邵可は苦渋を滲ませた表情で事実を告げる。

「そもそも、ことの始まりは私の弟のことなのです」

邵可は昔、騎士だったのだという。

ところが、パートナーであるファティマを亡くし、一時は生きる気力さえも失ったのだという。

それを見かねた邵可の弟の黎深は、邵可に新たなるパートナーを作ろうと、ありあまる才を全て注いで、一体のファティマを完成させた。

それが絳攸だというのだ。

「しかし、私の連れ合いは亡くした妻だけだと思っていますので、騎士をやめることにしたのです」

元々、私はそれほど向いていなかったですしね。と苦笑しつつ邵可は話を締めくくった。

マインドコントロールなどしたら、画一的な反応しかできない。というのが黎深の言い分だというのだが、流石の邵可も絳攸を見たときは言葉を失ったのだと言う。

それは、そうだろう、人に従うべく作り出された亜人種なのだから、超えてはいけない領域というのはあるのだ。

「そうだったんですか」

ようやく、衝撃から立ち直った楸瑛は搾り出すようにして、ようやくそれだけを口にする。

「すまない。騙すつもりはなかったんだ」

絳攸も瞳を伏せつつ、詫びる。

「いや、別に謝ることはないよ。驚かなかったといえば嘘になるけどね」

軽く肩を竦めて、殊更、何でもないことのように装う。

楸瑛はこのことは兄たちに報告すべきかどうか、頭を巡らせる。

もし、兄たちに報告することによって、絳攸が不利な立場に追い込まれることがあればと思うと、躊躇う。

「楸瑛殿、申し訳ありませんが、絳攸殿を黎深のところまで送ってあげていただけませんか?」

そんな楸瑛の心を見透かしたのか、邵可が穏やかな声で促す。

「ええ、構いませんよ。丁度、私の目的地もそこでしたしね」

とはいえ、目的のものは思いがけぬ形で出会ってしまったのだったが。

絳攸のごく短い時間ですら分かった、方向感覚のなさを間近にしてしまっては、一人で帰れなどとは危なかしくて言えない。

それに、どうにも離れがたくなっている自分がいて、笑ってしまう。

「何がおかしいんだ?」

突然、笑い出した楸瑛に怪訝そうに絳攸が問いかける。

「いや、今まで、私は運命論者ではなかったんだけど、何故か君との出会いは女神のお導きのような気がしてね」
「何だ、それは?」
「君のお披露目がすむくらいまでは、私もこの地に留まりたいと思ったってことだよ」

楸瑛は、器用に片目を瞑ってみせ、絳攸の手を取るのだった。

 






 



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