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チョコレート革命 4
「お前、何しにきたんだ」
「君に告白しに」驚きに瞳を見開く絳攸に構わず楸瑛は、はっきりと告げる。
「好きだよ。絳攸」
絳攸を見つめる瞳はどこまでも優しく、今までみたことのないような、深い愛情を湛えていた。
白い息と共に吐き出された一言に絳攸は、きゅっと唇を噛む。
今更、何だと言うのだ。楸瑛には彼女がいるというのに、それなのに、絳攸を翻弄しようというのか。「そんなこと冗談でも言うな!自分は女と堂々とデートしておきながら、どの面下げてそんなこと言うんだ!」
「え、デートって何のこと?」
「とぼけるな!今日、駅前のカフェに髪の長い女と入っていくのを俺は見たんだ!」これではまるで、ヒステリーを起こした女のようではないか。絳攸は叫んでからはっとした。
だが、楸瑛は怪訝そうに眉を寄せるばかりで、まるで、覚えがないという風だった。「もしかして…、十三姫のことを言っているのかな?」
「十三姫?」楸瑛はようやく、思い当たったように、晴れ晴れとした表情で、絳攸に問いかける。
「そう。私の異母妹だよ」
「異母妹…」絳攸は自分の早とちりに絶句し、次の瞬間耳まで赤くなる。
「もしかして、嫉妬してくれたのかい?」
楸瑛はにこにこと、何がそんなに嬉しいのか、雪さえ溶けそうな常春全開の笑みを浮かべる。
「そんっ、そんなわけないだろ!!」
だが、耳まで赤く染めて否定しても全然、効果はないわけで、反対に楸瑛に強く抱きしめられてしまう。
「嬉しいよ。絳攸。妬いてくれるということは、少しは脈ありと思って良いんだね」
「楸瑛、離せ冷たい!」
「うん。ごめん。このままでは君に風邪を引かせてしまうね。でも、もう少しだけ」本当は厚手のコート越に抱きしめられただけだったら、冷たいも何もないのだが、照れ隠しに、ついぶっきらぼうな物言いになってしまう。
「君も私のことを好きだと思ってくれて良いのかな?絳攸」
「そんなことは自分で考えろ」そう言って絳攸は、楸瑛の緩められた腕の拘束から抜け出すが、楸瑛は絳攸の頤に手をやり、瞳を覗き込む。
「駄目だよ。絳攸。君の口から聞きたいんだ」
楸瑛は絳攸が逃げられないように、片方の腕で、腰を固定し、もう片方の腕は絳攸の頤を固定している。
「…きだ…っ、好きだ!」
友達としてなどではない。友達としての好きなら、楸瑛が女と居たところで、これほどまでにショックを受けることはない。
二人の姿を見たとき、苦しくて、胸のむかつきが止まらなかった。
言葉にしてしまえば、後は堰を切ったように、楸瑛のことが好きだという気持ちが溢れ出てくる。蓋を開けてみれば、馬鹿馬鹿しいオチだったが、あのときは本当に苦しかったのだ。
「俺は、お前に渡そうと、チョコまで用意したんだぞ」
「私に?」
「言っておくが、色々と世話になっているから、その礼だからな」照れ隠しに、わざとぶっきらぼうに言って、絳攸はコートのポケットからコンビニで購入したチョコレートを取り出す。
「ありがとう。絳攸、食べても良いかい?」
楸瑛は絳攸から受け取ったチョコレートの銀紙をむくと、一粒口の中に放りこむ。
口の中にじんわりと酒の辛味と、チョコレートの甘さがじんわりと広がって、とても美味しかった。「うん。とても美味しいよ」
「そうか。それは良かった」楸瑛に笑みを向けられ、どうやら気に入ってもらえたようだと絳攸もほっと胸を撫で下ろす。
「君も食べてみる?」
「ああ」絳攸は頷くが、楸瑛は一粒摘むと、自分自身の口に放りこむ。そうして、絳攸の腕を引き寄せると、唇を合わせ、口の中に溶けたチョコレートを分け与える。
「んっ…!」
驚いた絳攸がもがいて、楸瑛から逃れようとするが、思いがけない強い力で固定され、それも叶わない。
「はぁ…」
長い接吻からようやく解放されると、絳攸は鼻にかっかったような甘い吐息をもらす。
「ごちそうさま」
「な、な、お前、今何したっ!」雪の接吻のような一瞬の冷たさの後、口腔内を焼き尽くすような、熱さが襲ってきた。
「何ってキスだけど」
口を両手で押さえ、真っ赤になって、どもる絳攸に対して楸瑛は悪びれた様子もなく、しれっとして応える。
「初めてだったんだぞ!それを、あんな、あんなっ!」
「初めてだったの?それはラッキーだったな」嬉々として弾んだ声で告げる楸瑛に絳攸は殴りかかるが、あっさりと受止められる。
そうして、絳攸があげようとした抗議の声は、再び楸瑛がキスをしかけたことによって、その唇に飲み込まれることとなったのだった。
コメント
何とも生温い話ですいません。そして、すでにW.Dの時期なのに今更ですいません。
最後は常春らしく、ちゃっかり楸瑛ということで。絳攸がかなりデレていますね~。