藍龍蓮の憂鬱 2
「あれは、忘れもしない、入学式の日のことでした。自己紹介をHRで、することになったんです。そうしたら、龍蓮は…」珀明はそのときのことを思い出したのか、目を泳がせる。
さすがに、身内がいる状況では話しづらいのであろうか、躊躇ったような仕草を見せた後、漸く、決意したのか、おもむろに口を開く。『この中に、宇宙人、未来人、超能力者がいたら、私のところに来るように』
そう宣言したのだという。
―成る程、電波系という噂が校内を駆け巡るのにそう時間はかからないはずだ−
楸瑛は、諦めにも似た境地で珀明の言葉を聞いたのだった。
「それは、面白そうなのだ!」
黙って、それを聞いていた劉輝が瞳を輝かせ、わくわくした様子で同意する。
「面白いことなんて、ありません!」
珀明が泣きそうな声で劉輝にくってかかる。
「奴は、一週間見てきましたが、毎日髪型が違うんです。月曜日は頭の上で高く束ね、火曜日は二つに結んでみたり…。何故なのかって聞いたら、曜日ごとに変えることによって、過去、未来いかなる情報の伝達を逃さない為だって言うんです」
電波系極まる発言に、この目の前の真面目そうな珀明という少年は、すっかり振りまわさされているようだった。
挙句の果てには、龍蓮は片っ端から部活に入りまくったものの、その全てがつまらないと言ってのけ、『ないのであれば、作るしかあるまい』
と、宣言し珀明を連れて、この文芸部を(部員一名)を乗っ取ったということらしい。この気の毒な少年に何と言っていいものかと、思わず劉輝と顔を見合わせたときだった。
廊下のほうから、罵声が聞こえる。
続いて、揉み合うようなどたばたとした足音。今度は一体何だとこの部屋にいる全員に緊張が走ったとき、勢いよくドアは開かれた。
「遅くなったな。だが、この通り無事部員は確保した。これで数は揃った。喜ぶが良い」
「一体、何なんだ!いきなり人のことを引っ張ってきて!ここはどこなんだ?!」「絳攸?!」
そう言った、龍蓮の後ろから手を引っ張られて現れたのは、銀の髪をもつ自分のよく見知った人物だった。
「ふむ、どうやら、愚兄その四の友であったか。これは何と言う奇縁」
「楸瑛?!これはどういうことだ?貴様の差し金か!?」いきなり、見知らぬ一年生に無理やり拉致されてきた絳攸は、ひどくご立腹のようであった。
「私は、何も関知していないよ、誓って」
楸瑛は、ずきずきと痛む額を押さえながら、弁明する。
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