スキ トキメキト キス 2

 

「おやおや、せっかくおいしいお茶請けをいただいたというのにね」
「まったく、お前は主上に甘すぎるぞ」

苦笑して、その姿を見送った楸瑛にたいして、絳攸は眉を顰めたまま、楸瑛に苦情をふつける。

「もしかして、妬いてくれているのかい?」
「誰が、妬くか。寝言は寝て言え」
「うーん。君の隣で眠らせてくれるなら、いくらでも愛の言葉を聞かせてあげるんだけどね」
「貴様は、いっそ永眠しろ!」

相変わらずの常春な頭の構造に、絳攸は声を荒げる。

「永眠したら、君に会うことも触れることもできなくなってしまうから、遠慮しておくよ」

楸瑛はそう言って、用意された茶器を器用に並べていく。

「お茶請けはね。秀麗殿の新作のお菓子なんだよ」
「そうなのか。それは、あの莫迦王もさぞ食べたかっただろうにな」

偶然、府庫に出向いた際に、お裾分けをもらったのだと楸瑛は告げた。

「主上はどこに行かれたのか分からないし、私たちで先にいただいてしまおうか」

楸瑛は、包みを解くと書翰を脇にどけた卓の上に広げる。

そこには、薄い皮で包まれた饅頭が、如何にも美味しそうに並べてあった。

目の前の菓子を前にすると絳攸も急になんだか小腹が空いてきて、早速一つ手にとってみるのだった。

「うまいな。見た目だけでなく味も良い。何故、こうも上手に作れるんだ」

一口齧ると、香ばしい薄皮の中に入っていたのは餡子ではなく、南瓜を甘く煮て潰したもので、その一風変わった味に素直に感嘆する。

「まぁ、ある意味君の饅頭も先鋭的ではあったと思うよ」

楸瑛は彼の作った饅頭を思い出し、忍び笑いを漏らす。

「う、うるさい!あれは好きで作っていたわけじゃない」
「はいはい、紅尚書に命じられて仕方なくだろう」
「そうだ!まったくあの人ときたら、ろくでもないことばかり命じるんだからな」

ぶつぶつと文句を言いつつも、その全てを結局は逆らうことなく受け入れるのは君じゃないか。と言いたいが、そんなことを口にしたら、自分ではまだまだ、絳攸にとっての黎深に匹敵するものにはなりえないのだと認めるようで口惜しい。

そんな楸瑛の複雑な胸中など知らず、絳攸は気持ちの良い食べっぷりを披露している。

「絳攸、ここついているよ」

言うが早いか、楸瑛の舌がぺろりと、絳攸の唇についた薄皮をなめあげる。

「なっ!なっ…!」

瞬時の出来事に対応しきれなかった、絳攸は舐められた箇所を手で押さえたまま後ずさりする。



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