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スキ トキメキト キス 3
それをあっさりと壁際まで追い詰め、逃げ場をなくしてしまう。
「何のつもりだ、楸瑛!」
「主上が先ほど言ってらしたけど、さっきのお祭りとやらを私も実行してみようかと思ってね」絳攸の唇にその長い指をあてると、黙るようにと合図する。
「お菓子をくれなければ、悪戯をしてしまうよ」
「菓子なら、まだそこにあるだろう?!」絳攸が焦った声をあげるが、自分にとっての菓子とは、焼き菓子よりももっと甘い芳香を放つ目の前の彼そのもの。
「君から、接吻してくれれば離してあげるよ」
どうする?と瞳に楽しげな彩を浮かべて聞いてくる、意地の悪い男に絳攸は悔しそうに唇を噛む。
「私はどちらでも良いけどね」
「ひあっ!」突然、耳たぶに軽く歯をたてられ、絳攸が上ずった声をあげる。
「わ、わかった。わかったから、離れろ!楸瑛」
「はいはい…」絳攸の様子を楽しげに伺っている楸瑛に、意を決して接吻をすべく唇を近づける。
ご丁寧に楸瑛は瞳を閉じていて目が合うことはない。とはいえ、普段このような至近距離でみることのない顔を前に戸惑ってしまう。(こうして見ると、女共が騒ぐのも理解はできるな)
高い鼻梁に、切れ長の瞳。それらを意識してしまうと、妙に動悸が早くなる。
いつまでも躊躇しているから、恥ずかしいのだ。たかが唇を合わせるだけのこと。
そう腹をくくったとときだった。
ところが、それは、楸瑛の唇と合わさることはなく、反対に楸瑛から絳攸の頬に掠めるだけの接吻をされてしまい、思わず拍子抜けをしてしまう。
「とても、残念だけれど、またの機会にしておくよ」
心底残念そうな声と共に、楸瑛が離れていき、同時に執務室の扉が勢いよく開いた。
「楸瑛!邵可から聞いたのだ。秀麗の饅頭はどこだ」
慌てて、絳攸も楸瑛から距離を取ると、先ほどまでの空気を誤魔化す様に椅子に座り書翰を手に取る。
「主上の分もちゃんと取ってありますよ」
楸瑛は、綺麗に器に盛られた饅頭と新たな茶を劉輝の前に置くと、何事もなかったような顔をして、自分の定位置に腰掛ける。