The Seven Star Stories 2
紅黎深。こちらも若くして、紅国を治める当主だが、煩雑な政務は実弟に任せて、主にマイトとして工房に篭っているのが現状というところらしい。
「あの、紅黎深殿がファティマを造ったとはね」
星団では、マイトと呼ばれる科学者たちがいて、彼らは戦艦や、MHと呼ばれる、巨大な電気仕掛けの騎士、あるいはファティマといったような戦闘兵器の開発に携わっている。
ファティマとは、騎士だけが所有することが認められた、亜人種である。
騎士とは、モーターヘッドに搭乗する、パイロットのようなものだが、その操縦は煩雑で、戦闘時ともなれば一人ではとても処理しきれない。
その騎士をサポートすべく生まれだされたのがファティマと呼ばれる人工生命体である。
人間とほぼ同じ外観を持つものの、違いといえば、優れた演算能力や、その圧倒的な美しさであった。
時にそれは妖精とも人形とも称される。
そう、ファティマとは人間と変わらぬ外見を持ちながらも人間の下に置かれるべき亜人種であって、人間には絶対服従という数々のマインドコントロールがされているものだった。
そのファティマをどれだけのものなのか見極めて来いというのだ。
兄たちの命を実行するのは容易ではない。
もし、紫国で行われるお披露目に黎深がファティマを伴っていないとなれば、事態は益々ややこしいこととなる。
なぜならば、藍国と紅国は国交を結んでいない。
正式に呼ばれたわけでもないのに、紅国の区域に藍家のものが足を踏み入れるのだ。
それが使者も立てずにいきなり直系が入り込んだとあっては、見つかれば藍国は紅国にたいして含むことがあるのかと言われても仕方のない状況になりかねない。
仮に、私的な訪問です。と工房を訪ねていって黎深は会ってくれるだろうか。
ファティマを育成中とあれば、王宮ではなくそれは紅黎深の別邸ともいえる工房にその件のファティマはいるということだ。
(あの兄たちの弟ということで、私もあまりよく思われていないからな)
楸瑛は公の場で何度か顔を合わす度に、不機嫌そうに眉間に皺を寄せていた彼の姿を思い出し、改めてこの難題をどうしろというのだと思い、ため息をつく。
困り果てた様子で、楸瑛は腰に挿した光剣に何とはなしに手をやる。
楸瑛が腰に下げている剣は騎士の証である。
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