The Seven Star Stories 3



その光剣に手をやったのはどうにも性質の良くなさそうな男たちが、先を行く一人の人物の後をつけていたからだ。
注意してみれば、ごろつきの鴨と思われる人物は、時折立ち止まり、きょろきょろと首を巡らせている。これでは、襲って下さい。と謂わんばかりだろう。
「さすがに見てみぬふりはできないね」
苦笑しながらも、その表情は良い気晴らしになりそうだと物語っている。
路地を曲がった男たちから、少しの距離を置いて、楸瑛も歩みを進めるのだった。
 
 
「そこの兄ちゃん、ちょっと待ちなよ」
どうにも人相の良くない男の一人が、目の前を歩く青年に声をかける。
頭からすっぽりとフードを被った青年は声をかけられて初めて、男たちの存在に気がついたようだった。
「どうも、さっきから見ていると、道に迷っているみたいじゃねぇか。良ければ俺たちが案内してやるぜ」
男たちはにやつきながら、逃げようとする青年を路地の角に追い詰める。
「なぁに、安心しなよ兄ちゃん。ここらは俺たちの庭みてぇなもんだ」
「その後生大事に抱えている荷物も預かってやるからよ…痛ッ」
そう言って、フードを被った人物に手を伸ばそうとする。
だが、その瞬間、男は伸ばした手を石礫に打たれ、手を引っ込める。
「誰だ?!」
「どうやら、彼は嫌がっているようだけれど?無理強いは良くないな」
ごろつきたちが何事かと振り返った先には、楸瑛が立っていた。
「なんだ、なんだ、貴族の坊ちゃんが供も連れないで、お散歩かい?」
一斉に声のする方向に振り向いた男たちは次の瞬間には、如何にも育ちのよさそうな貴公子全とした楸瑛の姿をみつけ、鴨が葱をしょってきたとばかりに、半数が楸瑛の方を取り囲む。
そうして、腰に刷いた光剣をオンにすると、その刃をこれみよがしに楸瑛の目の前に翳す。
「俺たちは、騎士なんだぜ。怪我したくなかったら、さっさと置くものおいて、去った方が身の為だぜ」
だが、楸瑛に飛び掛ろうとした、ごろつきは、次の瞬間腕ごと、光剣を腕ごと切り落とされ、絶叫する。
「それは良かった。騎士は民間人に危害を加えることは禁じられているからね。実は私も騎士なんだ」
楸瑛は実に楽しそうに、にこりと笑む。
「野郎!舐めた真似しやがって!」
口々に叫んで、飛び掛るが、楸瑛の姿が消えたのを認識する暇もなく、飛び掛った男たちは、次々に地面に這い蹲る羽目となった。
その圧倒的強さを目の前にした、残りのごろつきたちは、囲んでいたフードの青年のことなど、忘れたかのように、方々の態で、我先にと叫び声をあげて逃げ出していくのだった。





 



TOP NOVELTOP NEXT